Little star's

 
春真っ盛り、そう春真っ盛りである。
ぽかぽか陽気で、いい気持ちときたもんだ。
眠れと睡魔が誘うこの季節。
そんな春の日に、一つの家族が日本に降り立った。

「父上ーおとうさーま、早くはやくー」
「待ってよ、リオンにいちゃん」
 
満開の桜の下、仲良く走る子供が二人。
後には、仲睦まじげに歩く、青年と青年に変わりつつある少年が一人。

「リオン、ティル。そんなに急いだら危ないぞ」
 
と言ったのは、茶色い髪をした青年―――コンラートだった。
コンラートが注意したのも構わずに、子供達―――リオンとティルは走るのを止めない。
二人にとって、桜は始めて見るものではしゃぐ対象なのだ。

「まあまあ、コンラッド。あいつ等のやりたいようにさせてやろうよ」
「ですが……」
「もう、コンラッドは心配性だなぁ。大丈夫だって、もっとあの子達を信用しようよ」
「信用……してないんじゃないですけどね。でもあの子達を見ていられなくて」
 
コンラートのそんな態度に、少年―――ユーリは苦笑いを浮かべた。
どうして彼は、こんなにも心配性なのだろう。
自分ばかりでなく、子供達にも変わらず愛情を注ぐ彼がどうしようもなく好きなんだと思い知らされるようだ。
子供が生まれて六年、子供だった自分も二十歳を越えた。
子供から大人へと、階段を一つ登った。
姿は、ほんの少ししか変わっていない。
あと少しすれば、成長はもっと緩やかに成るのだろう。
向こうの魔族と同じように。

「なあ、コンラッド」
「なんです?ユーリ」
「おれさ、あんたと一緒で良かったって、今になって思うんだ」
「え?」
「辛いこともあったけど、だから今の幸せがあるんだなって」
「ユーリ……」

 辛いこと、それは多分コンラートが大シマロンへ出奔していた時のことだろう。
あの時のことは、すでに過去とはいえ軽視される問題ではない。
けれど、過去は変えられずその過去があるから、今の自分達がいる。
もし過去を変えてしまえば、この幸せは無かったのかもしれない。
偶然の巡り会わせで、掴んだこの幸せを今は無くしたくない。

「どうしていきなり、そんなことを?」
「ん?あの子達がさ、ついこの間こんなことを言ったんだ『どうして父上と結婚したんだ』って」
「……」
「おれ、その時すぐに答えられなかった。だってさ、好きだったから愛してるからって言葉で言いたくなかったんだ」
「……」
「おれが、コンラッドと結婚したのは、あんたと一緒に幸せになりたかったから。一緒に居たかったんだ」

 好きだ愛してるの前に、二人一緒に居たかった。
幸せになりたかった。

「ゴメン、こんな理由で」

 恥ずかしくなって、俯くユーリにコンラートがポンと肩に手を置いた。

「いいえ、そんなことありませんよ」
「え、なんで……?」
「二人で幸せになろうってことは、それほどまでに俺を想ってたってことでしょう?」
「え、ええっ?」
「違いますか?」

 顔を覗き込まれて、うっとなった。
決して、鵜飼のうっとなるではない。
マンボ、ウーでもない。

「ち、違わないけど……」

 言ったユーリの顔は、熟れた林檎みたいだ。
恥ずかしがり屋の、妻?兼主兼名付け子が愛おしく思える。
未だ初々しい反応を示すユーリが可愛い。
幸せになろうということ、それは好きだから愛してるからだけではなく、その人が大切だからと言う気持ちも入っている。

「簡単にあの子達に言いたくなかったんでしょう」
「うん。おれ達は辛いこともあって、苦しんだりもしてやっと結婚できたんだ。だから……」

 コテンとユーリが身体を、コンラートの身体に寄せる。

「判ってますよ」
「うん……」

 仲睦まじいユーリとコンラートに、前を走っていた子供達が走りよってきた。

「あー父上と、お父様ラブラブだー」
「ホントだー」

 同じ顔をした子供達が話す。
違うのは、髪の色と目の色だけ。
顔つきは、コンラートに似ているといったほうがいいかもしれない。
まだまだ顔つきは、変わるのだけれど。

「り、リオン、ティル」

 慌てて、ユーリがコンラートから離れる。
肩を抱こうとしたコンラートの手が、空を舞う。

「父上とお父様って、グレタおねーちゃんが言った通りラブラブだよねぇ」
「うん、グレタおねーちゃんの言うとおりだね」
 
 当の本人、グレタは美子とウィンドーショッピング中である。
女の子のこと?いや女性のことは女性でないといけないらしい。
年頃の女の子は、難しいお年頃。
なので、この散歩?は男四人の散歩なのだ。

「僕達あっち行ってるから、父上達はそのままどーぞ。いこ、ティル」

 リオンがティルの手を引いて、桜並木の向こうの公園へ駆けていく。
子供なりの気遣いと言うやつだろう。
残された二人は、顔を見合わせて笑みを浮かべた。

***


 小さな星達。 星と太陽の間に生まれた子供達。 闇に輝けと祝福の詩。




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尊敬するサイトさんのところから4月度フリーでもらってきました。このシリーズはお勧めです。by朝葉


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