あれから20年。
キャッスルたちは15年位前に俺を見つけ出してくれた。
あのときの爆発じゃ、あのくそ忌々しい親父は死んでいる。でも、その後ヘルに食われなかっただけでもましかと思っている・
今では幸せに生きている俺。でも俺の身体はユーベルメンシュとして産まれてきたせいか、限界が近づいてきている。
俺はまだ生きたい。
レジーナと。子どもたちと。第2分隊の仲間たちと・・・。もっと生きたい。
(2)
キャッスルが自宅に戻ると子どもたちが出てきた。上から、マクシミリアン・エーリヒ、ジューン・メイエ、アンゲリカ・モニカ、サリエル・アロイスだ。4人とも、ラファエルの遺伝子を強く受け継いだのか、ユーベルメンシュの因子を持っている。シュレンドルフ家のモニカとともに・・・。
「お帰りなさい。お母様」と子どもたちが駆け寄ってきた。その後から、グットリーが笑いながら出てきた。
「お帰りなさい。キャッスル、うちのだんなとラファエルが待ってるわ」そういいつつ、子どもたちを引き取っていった。
あの大戦の後、グッドリーは月面都市の教育大に進学した。
そして、火星のエリュシュオン医科大学を卒業したシドーとこの地に住んでいる。
キャッスルはラファエルの寝室に向かった。そこには、まだ床に就いてはいるが、財閥の仕事をするラファエルと、彼の主治医であるシドーがいた。
「ラファエル?体調は良さそうね・・・」そう、声をかけると、「おうよ」と治安部隊の感じで返事が返ってきた。
そう、あれから20年は経ったのだ。ユーベルメンシュはその遺伝子操作により、寿命が一様に短い。軍の将校でも、ほとんど戦場に出ずに働いていたエーリヒ・シュレンドルフは、他のユーベルメンシュより長い45まで生きた。
「子どもが、10台になるまでは生きれてよかった。といって・・・。」
だが、ラファエルは違う。16〜18という時期に、最前線で力を振るわされた。そして、多くの同胞をその身に憑依させていた。完成されたユーベルメンシュとしての期待と政治的思惑が絡んだ戦時中の行動が、彼の寿命を縮める原因となる。
もともとユーベルメンシュの身体は、遺伝子を人工的に操作し身体能力を強化したものである。そして、その最後は、強化の反動か激痛を伴って衰弱死するのだ。
今はまだ、間隔が開いているこの発作も、どれぐらいもつか・・・。
最初の発作のときに、今は亡きエーリヒの助言で、軍の除隊をラファエルは決めた。
最初、中将まで上がっていた、ラファエルが、軍の除隊ということで、火星や月面都市が父の二の舞かと思われたが、彼の除隊の原因がユーベルメンシュ特有のものであることや、火星に戻るときに一切政治には口を出さないという誓約をしていることが、彼がスムーズに除隊できた理由だった。
ラファエルが火星に戻ったのは、あの大戦終結から、6年後、キャッスルやエイゼンと再会し、失った記憶を取り戻してから、半年後だった。
ラファエルの帰国には、火星都市から誓約書の提出まで求められた。
「それだけ自分と、父親がどれだけ、国民に迷惑をかけたのかが、よくわかるよ。」火星で再会した第2分隊の面々にそう言ったラファエル。父の手で中佐の地位にあったが、軍隊復帰には、見習い兵からでいい。そう言ったが、国政の中心にいた者は彼の過去の地位からの再出発を決めた。
数年後、TVのインタビューで、「何故、軍隊を選んだのか・・。」と聞かれたとき、ラファエルは、こう答えた。
「僕の中で生活の場というのは、16まで過ごしたスラムか、かけがえのない仲間とあえた治安部隊か、様々なものを失った火星軍しかないのです。ですが、たくさんの人々のおかげで、今ここに所属できることを感謝しています。当時、あの忌々しい父の道具であった僕を受け入れてくれたこの場を。
僕ははっきり言います。他の将校の皆さんのように、上官としての士官教育を受けていません。僕の兵士としての教育は治安部隊時代の一般兵の教育だけなのです。だからこそ、この場に向いていないのかもしれません。だけど、この身体のがたが来るその日まで、火星や地球、そして月や他の星の皆さんの、復興や今ある平和を続けるためにために今ここにいるのです。」
父親にように人々を操作するような話し方はできないラファエルは、たんたんと語った。
自分の思いを伝えた。そんな感じだった。
あれから20年。キャッスルとあって22年。この時間の速さは、ラファエルというものの一生の流れの速さだった。それほどまでにそれ以前より速いのだ。
そう思わずに入られなかったのは、キャッスルも、ラファエルも同じだった。
*******
そう、2人が回想にふけっているとき、急にシドーの携帯が鳴り出した。
「もしもし、何事だ。」
「―――」
「はぁ、またか。分かった。すぐにゲプラーに向かう。」
そう言って通話をきったシドーは、
「悪い、あの軍曹がまた、馬鹿訓練を敢行して重傷らしいから行って来る」
そう言って、ラファエルたちの元を去った。
火星医務士官学校を出ない医療将校はめったにいない。さらに他校で医師免許を取得しての、医療将校もあまりいない。だが、シドーの場合は、治安部隊時代の経験と専攻が救命分野であったこともあり、めったに受からないとされている、医務士官学校編入特待生試験を経て医療将校としても働いている。
医務士官学校においては、士官学校とは違い、基本的に戦闘スキル必要でも、作戦立案は行わない。シドーは事前の戦闘スキル検査で2年次相当とされたが、士官学校の訓練課程を経ていないため、卒業要件はその部分の単位のみとされた。実際、そういうパターンは時たまあるらしい。
そのシドーが軍曹がというのは、第2分隊仲間では限られてくる。
アレキサンドル・エイゼン。月の士官学校4年次自主退学、8年以上に及ぶキャッスルに対する護衛、その後の暗殺家業を経て彼もまた一時期籍を置いた、火星都市軍に復帰していた。今の地位は准将。その准将は陸軍内でも、時々自身に対して過酷な訓練を行うことで有名であった。
そして、そのさいの怪我は、今の火星都市軍では、あまり見られない類なのだ。
なにしろ、実戦経験は今ではほとんどない軍である。時たま起こる内乱じみたものの治安維持か、災害時の緊急派遣ぐらいで、戦闘=訓練しか思っていない若手医療将校も存在する中で、そういう怪我に手馴れているのは、シドーしかいなかったのだ。
エイゼンの馬鹿訓練・・・それは同時にエイゼンの精神状態を表すと知っているのは元第2分隊仲間だけであった。彼の精神状態がいい時は行われないその訓練は、それだけ彼の精神が追い詰められていることを示している。
そして、今回の原因は・・・仲間を失う事による恐怖心・・・。それが分かっているから、キャッスルたちは何も言えない。その恐怖心を口に出すのなら、ゲプラーでレベルを通常以上の訓練を行い、自分の体を痛めつけたりするほうがいい。そういう男だからだ。エイゼンは。
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想い第2弾です。って、そういえば、キル・ゾーン知っているのってどれぐらいいるんだろう・・・。
08・05・07脱稿 08・05・09UP