自分の思い人は、犯罪者だった。
自分の思い人はいつの間にか住む世界が変わっていた。
漫画の世界、自分には関係ない世界
そう、思いたかった。
だけど、それは現実世界で・・・。
あいつの背中
高校の卒業式の数日後に、武は友人たちとこの国を出て行った。行き先だけは教えてくれた。
呼び出されたのは、彼が旅立つ前日。高2のときから付き合っていた私は何の疑問もなく呼び出しに応じた。夕方で夕焼けに染まる公園のベンチに座りながら、武は、何気ない風に言った。
「俺、ツナについて、イタリアに行こうと思うんだ。」
唐突に言った言葉は私には理解できなくて・・・。でも、彼をつなぎとめたくて。内心、自分がこんな乙女だとは思わなかった。
あれから1年ちょっと。あいつは、私のの20の誕生日の直後に並盛に帰ってきた。
「黒川、時間あるか」
家にひょっこり現れたあいつはそう言ってきた。
私が傍に居なかった1年ちょっとの間に何があったのか・・・。あごのところに傷があった。もともと、剣道の師範だったという彼のお父さんについて剣もやっているとは聞いていたけど・・・。
あっ。武からほんの少し
血のにおいがした。
あの日同じように、公園のベンチに座る。
違うのは季節と自分たちの格好。
武はスーツだった。しかも、黒いスーツだった。
ふと、自分とこいつがタメだと言うことを思い出す。
ベンチに座ってどん位経過したのだろう。夕日が沈みだしていた。
「黒川、俺さ。実は、今マフィアなんだ。」
そう言ってポツリポツリ武は語りだした。そのときは半信半疑だった。
「うそだと思うんだったら、そう思ってくれていても構わない。」
そう、言いつつ、ぽつり、ぽつりと話し出した。
自分のこと、沢田のこと。でも、裏社会だから話せることには限界があるらしく・・・。
でも、少しあいつの世界を疑問視していた。たまに、ニュースでマフィアと言う言葉があるけれど、その存在自体、疑問視したかった。
それに、なんであの野球少年だった武が、そんな世界にとも思った。正直言って、そんな彼を信じたくなかったのだ。
実際に目の前であいつが人を撃ったときまでは・・・。
話している最中に、一瞬何かを感じたのだろう、あいつは懐に素早く腕を入れて銃を取り出した。
そして、一瞬横を向いたと思ったら、もう、銃を撃っていた。
「なっ、何があったの?」と聞くと、「あぁ、たぶん、俺を狙った残党だな。ちっ、事後処理が面倒なんだよ〜」と言いつつ、撃った方向に向かっていた。
「黒川はそこに居ろよ〜」そう、向こうに行くあいつに言われたが、ちょっと気になって、ついて行った。
数メートル先であいつは立ち止まった。そこは木がうっそうと茂っているところで、男が血を流して倒れていた。
それを見ながらあいつは電話をかけていた。
『もしもしツナ? -- 。ちょっと事後処理に何人か派遣して欲しいんだけど・・・。――。そう、死体。たぶん、ゲオルッティのだわ。一昨日片付けた・・・。どうやら残党がこっちまでついてきたらしくってさ。 ――。ってなわけでよろしく。場所は並盛の公園で木がうっそうと茂ったとこ。――。うん、そう、俺らが高校時代に遊んだとこ。――んじゃよろしく。』
イタリア語で話す武はやはり、一般の大学生の自分にとってはすごく異質で。今の言葉がイタリア語だと分かったのは、卒業旅行にイタリアに行きたくて勉強していて分かったのだが。
そして、あいつにとってはこういう話がが日常で・・・。
凄く世界観の隔たりを感じた。
そして、今こいつを捕まえないとこの後絶対後悔するって唐突に思った。
電話をかけ終わって私を見たあいつは、苦笑いで・・・。
「悪ぃ、こんなもん見せちゃったな。とりあえず家に帰るか。」
といったけど、私は動けなかった。あいつが隣に来たときにあいつのスーツを握ったまま・・・。
その時にはもう、夜で日が沈んでいて・・・。そんなかで自分の中にいろんな思いが交錯しているのが自分でも分かった。
初めて人が人を殺す瞬間を見た。
初めて人が殺される瞬間を見た。
人を殺したのは自分が恋したあいつで。
もうすむ世界が違うと思った。
でも今あいつを捕まえなきゃ自分はもう一生接点がないかもしれない。
そう思うとやっぱり伝えなきゃと思った。こう思うこと事態、もう、いつもの自分らしくないと思ってはいるし、自分もそう自覚しているけど・・・。
「俺さ、自分がマフィアになると決めたとき、ツナに怒られたんだ。山本には野球があるんだから捨てちゃだめだって。ツナの思いは分かっていたよ。あいつは自分のせいで俺を闇の世界に引き込みたくはなかったんだ。だけど、あいつに命救われたし・・・。俺があいつの傍で支えてやりたかった。だから、俺は今の世界に居る。もう、戻れないと分かっていても・・・」
そういったあいつの目をみて、私はあいつを引き止めたかった。
あいつの世界を罵りたかった。
だって、あいつは私を今度もまた置いていきそうだったから。
京子も私も思い人はマフィアで・・・。こっちで言えばやくざで。漫画で言えば『静か○○ドン」の世界で私にとっては現実とは思えない世界。だけどそんな世界で生きている思い人は自分の目の前で躊躇無く人を殺した。
「黒川、お前はこっちに来ようと考えるな。お前に何かあったら俺はたぶん、心にぽっかりと穴が開いてしまうから。」
そう言ってあいつは背を向けた。
あいつの言葉は私に対する別れの言葉だった。そんなことを言うなとも思った。住む世界が違う、自分はもう血にまみれている。そんなことで私から去らないでと思った。あんたが、私に何かあったらたぶん・・・。というように私もあんたに何かあったら・・・。
そう思ったら走り出していた。
少し走るだけで、追いついた。だけど少し走っただけで呼吸がもう乱れている。でも、これだけは、言わないと。
「武、私はね、あんたにおいていかれるのがもう嫌なの。あんたが私に何かあったらと言うようにこっちもあんたに何かあったら嫌なのよ」
自分の言ったせりふに驚いた。あいつの顔を見ると泣き笑い状態だった。
「その言葉後悔すんなよ。」そういってあいつは笑った。
そのあとに見た彼の背中はボンゴレの幹部候補という重さが漂いながら、ちょっとは軽くなった感じがした。
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あれから数年後。
私は京子とともにイタリアの地にいる。
マフィアの妻として。
でも、夫のボスであるドン・ボンゴレは私にはマフィアの仕事については極力関わらせない。
私の立場はボンゴレの表財閥の会長秘書で・・・。
でも、私は山本花となったことに後悔はしていない。

フリー小説第1弾。リボーンで山花です。基本は6年後?20歳設定。
なんか黒川嬢の性格がつかめずに性格捏造したになった感じになってしまった。