毎年、この時期になると自分の罪に苛まれるようになる。
自分が直接・間接問わず犯した罪に・・・。
それは、この国がカトリックの総本山を懐深くに抱くためなのか・・・。
季節柄そういう雰囲気をこの国が醸し出しているのか・・・。
それとも、昔を思い出してしまうからなのか・・・。
昔は無垢でいられた自分。
子羊のように・・・。無垢だったと思う。
今ではもう、この体は血でまみれている。初めて人を殺したあの日以来・・・。
黒く・・・ 赤く・・・。
黒く・・・ 赤く・・・。
無垢だった羊
綱吉が高校2年のときだった。
その頃には、京子とも付き合っていて、でも、綱吉自身がマフィアになり、しかも、ドンになる定めだとは言えなかった。
だがしかし、綱吉は京子と下校時が重なるときは、いつも、京子の家に送っていた。
その日は、いつもそばにいる獄寺が、ダイナマイトの仕入れに行っていて、その代わりのように山本と3人で帰っていた日だった。
偶然なのかどうなのか・・・。山本はその日部活が休みだった。公立しかも、そこそこの進学校なのに春の甲子園に行く実力があった並盛高校は、夏の甲子園に向けてまた、朝夕厳しい練習のさなかの休みの日だった。
いつものように京子を自宅に送り、自宅の方へ向かっていた。山本とたわいもない話をしながら・・・。
そんなときだった。ちょうど山本の自宅近くの空き地に差し掛かった時だった。不意に殺気を感じた。
ここのところ増えているらしい、自分たちにとって嫌なお客さんだろうという判断は2人してすぐついた。
「困ったもんだね・・・。できれば、今回も使いたくないんだけど・・・」
ぼそっと綱吉はつぶやいた。
隣で山本もうなずく。
綱吉のブレザーの中には、小型の拳銃が1丁と予備の弾丸が入っている。
1年位前から、リボーンに習っている、射撃訓練のせいもある。
だが、綱吉にとっては、護身用でもあり、鞭と同じぐらい自分にとってやりやすい武器だ。
だが、敵は待ってくれなかった。
10人近い敵は、二人が空き地に入った途端襲ってきた。
綱吉達は、二人して応戦していく。
途中からどこから現れたのか、リボーンやディーノも来ていた。
綱吉も山本も、人を殺さなくて済んでいた。
いつも、リボーンがいたから。リボーンがいなくてもヴァリアーがいたから。
刺客の命の火を確実に消していたのはいつもリボーンや彼等だった。
人を傷つけたという罪悪感はあっても、人を殺したという罪悪感は全くなかった。
それは、いつも、彼等が最後はやっていたから・・・。
だが、そのとき、銃が向けられているのを感じたとき、綱吉は、反射的に銃を撃ち、彼を殺した。
初めて人を殺した 初めて人を・・・・・・。
その途端、綱吉の脳は許容範囲を超えた。
かろうじて銃を落とさなかったものの・・・。
それは、綱吉の手が血に染まった瞬間。
そして、自分の覚悟を決めた出来事。
あれから、6年が経った。 いまでも、綱吉は思い出す。最初に人を撃ったときを。
それを思い出させるのは特にこの季節。
イタリア中が罪を想い、自覚し、主の復活を祝う この1週間だからなのか・・・
子羊は、罪びとの罪をかぶって黄泉に下った。
人のエゴを一番感じさせる、というか自覚させる季節が>
また巡ってきた。
この時期にだけ、何故キリスト教国のマフィアがそろいもそろって、派手な活動をしないのか・・・。
それは、この血なまぐさい日常で唯一罪を自覚させられる時期だからなのかもしれない。
なんだかんだ言って染み付いているキリスト教の精神を思い出させるのだろう。この時期は・・・。
はるか昔、ユダヤの地で1人の男が、権力者のエゴで死んだ。その日以降に彼に被せた罪を想う人のように・・・。
それは、信じるものは違えど、綱吉にも彼等と同じような思いを持たせるこの地に染み付いた想いだった。