死神は魂のバランサー。それはイレギュラーな方法で死神になった俺にも当てはまる。
現世に影響を出している以上、何らかの方法を取らなければならない。

人と死神とのはざまで

藍染の騒乱が終わって1ヶ月後。尸魂界はほぼ元通りになった。1月の月例隊首会は、昨年と変わらず、10人で行われるが、今回は特例で病欠の5番隊および空席の13番隊を除く全副隊長が参加した。5番隊の副隊長雛森桃は病でふせっている。
会議は長時間続いた。
 まず最初は各隊の来年度の予算について。隊長が抜けた隊については隊長の給与分の予算はカットされた。だが、代行権限の2人には隊長手当が支給されることが決まった。
その後は現世にいる死神代行に関してであった。死神代行黒崎一護にどうやって恩を返すかであった。
もうすでに死神としての能力は半端ない。あとは鬼道だけであった。実際、実働部隊である護挺13隊の隊長格と互角にたたかうことができるのであと数十年し、一護が現世での生を終えたら確実に死神になる。だが、最近の騒ぎを聞いた一部の隊の中堅連中(しかも貴族の家柄)の者たちが隊首会に連名で陳情書を出してきた。曰く
『力あるのなら、早急に現世での生を終わらせ、死神にさせよ
もしこの要求が受け入れられないなら、貴族会が動く』
というものだった。
「貴族会って護挺でもあんまり力ない気がしたけど」
その話を聞いて最初に口にしたのは自身が上級貴族京楽本家の二男であり、13隊のうち8番隊の隊長を務める京楽春水。彼の場合はさらに王族の外戚という妙に重い肩書きがつくことがある。それに一般には知られていないが、黒崎一護の父、一心の最初の隊の上司だった。
「ああ、実力ではなく、家柄に固執する保守的なグループだな」
実際にばっさりと言い放つのは6番隊を受け持つ四大貴族の当主朽木白哉。黒崎一護がいなければ、嫁の妹とは壁が残ったままで死なすことになるところだった。少しずつ今では思ってることを話せるようになってきているのは彼のおかげだ。
「だが保守的だからこそ過激になった時の行動が怖い」
下級貴族出身の吉良。上司の市丸ギンの行動のおかげで胃が痛い思いをしたのだがそれが今回の件の功労者であることを知り、ホッとしている。だがギンが隊に戻ることを拒んだがために未だに隊長代行業務を行っている。
貴族出身でも実力で隊長・副隊長になった彼らだ。家柄に固執することが無い。
「実力行使ね。行使されると一心が殴りこんできそうだが」
父親の一心とは京楽を通じての知り合いの下級貴族出身の浮竹も困惑している。
そして2時間後、ようやっと決まったのは、
・黒崎一護に「死神籍」を特例にて与えること。
2月より現世での学業の合間をぬって真央霊術院にて鬼道の訓練を行うこと
ただし、現世において元死神浦原喜助、四楓院夜一・塚菱テッサイの指導の下の訓練も可
・規定の課程が修了後、席官で空きがある11番隊4席とする。
・現世での死亡時期にもよるが、相応の実務経験をつんだのち空席の13番隊2席にする。
このことが決まった時一番喜んだのは、更木達であった。実際更木は基本事務仕事ができない。それに、4席は美しくないとかいいって4席の実力を持ちながら5に居座っている自分が思う以上に個性的だ。
「これで文句言ってくると後でしばきたくなるぜ」
そう、更木が言うと白哉も、
「死神にはするし、貴族会は一応面目がたつ。まぁ、黒崎の了承はいるが。貴族会の要求は、生身の人間が死神化するということに納得がいかないとか結局は自分たちがあまり最近の流れに乗れていないからというだけだと思うが。これで聞かなかったら貴族会潰すといい。護邸は実力主義の場なのだから」
といい、その後別件を確認して隊首会はお開きになった。



その数日後、先輩たちはセンター試験という状況で、センターの過去問(授業範囲)という高校生にとってはありがたくもない宿題を一護は部屋で片付けていた。
 藍染の件が終わってからは虚も以前よりかはあまり出ていないので久しぶりに学生生活が送れるということにホッとしてもいた。
「黒崎、勉強中悪いな」
という声がかかるまでは。
「どうした、冬師郎」
「日番谷隊長だ」
いつもの間にか対死神用の玄関と化した窓には10番隊の隊長日番谷がいた。律儀に草履をそろえて持って部屋に入ってベッドに座ると、
「黒崎、お前に護廷に死神として入らないかという話が出ている」
「は?正式にって死ねってことか」
「詳しくは親父さんがいた方が話しやすい。」
「分かった」
そう言って一護は部屋を出て行った。すぐに階段を下りる音がした。
その突出した能力故の尸魂界の政治の道具にされることを一心は望まないことを冬師郎は知っていた。幼い時に霊術院に入学するまで、流魂街で死神になれと言ったのは乱菊だが、基礎学力の面倒を見てくれたのが当時10番隊隊長だった黒崎一心だった。一心とは自分の出自の関係もあるがそれを知っているのでどう思うかは予想がついていたが。王の血族である自分たち。一心は紛れもない直系の第3子であり、自分は第6子の妾腹の子。自分がそうだというのは知っていた。流魂街にいながら実の母にしばらく育てられた記憶があるのだ。
「お父さんにはなかなか会えないけど、生きているのよ」
そう言われたのは母が死ぬ間際だった。その後は母が世話になった人を実の祖母として過ごした。その後、乱菊に会い、実父にも一心に会い、王族特務特殊部隊の基礎訓練を受けながら、霊術院の入試を受けた。その後も一心の存在は大きいし、松本乱菊に至っては、護廷でも上司部下の関係のため気易い仲間だ。またその縁から、市丸の任務内容も知っていた。よくさぼりと称して任務の報告に市丸は10番隊に来ていたのだから。そしてその内容を現世に流すのはいつも、冬師郎か乱菊の役目だった。だから、藍染の件で隠れていろいろ連絡をとっていた。藍染の件で彼は唯一当時の人間で浦原に近しい人間でありながら、立ち回りがうまく護廷に残れた人間であり、冬師郎にとっては父親代わりな人である。まぁ、一護も一心も両方知っているというのと、京楽は、冬師郎ほど今の現世に詳しくないのと、総隊長しか知らない様々な事情で冬師郎が伝令役になったのだ。
数分後、一心を連れて一護は自分の部屋に戻ってきた。
そして、冬師郎は部屋に結界を張った。簡単なものだが、霊力の高い夏梨にも聞かせたくない。夏梨は死神や虚を認識できるが、死神ではないのだから。
「で話ってなんだ。お前が来るということはよほどのことじゃないのか」
そう言った一心に事のあらましを冬師郎は告げた。聞いた一心は、
 「はぁ、お気楽な貴族連中と言うのは数十年では変わんねえな」
「って知ってるのか、親父」
「まぁな。一時期とはいえ隊長職を行っていた分、あそこの貴族連中の意地汚さはわかってはいるが」
「ちなみに隊首会出席者はぶちぎれてましたが、強硬手段に出られてはかなわないと総隊長を含めて今回のことをある条件で認めさせたんだが」
「その条件が一護を死神にするということか」
「ああ。ただ、早急に死ねというわけには人道にもとるし、何度も黒崎家には助けられている。そのことをプラスして、一応霊術院の特別訓練コースに編入させ、尸魂界の常識と鬼道一般の課程を終わらせて11番隊の4席ということにするが、本人次第ということにしてある。じゃないと朽木が実力行使をしかねないのだが」
「財政面で貴族会のバックアップは未だに欠かせない護廷だからな」
さすがに元護廷の隊長と現護廷の隊長は事情が分かっているのでぽんぽんと話が進むが、肝心の当人は話の内容が分からなくて押し黙っていた。話についていけないのをみてとった一心が説明をした。
「ああ、今回いちゃもんつけてきたのが、貴族会っつーまぁ護廷の予算をにぎっている人間どもの集まりなんだ。尸魂界は広いが主に数が1に近い地区の流魂街からの税金、税金といってもあんまり意味がない税金と貴族会の寄付、そして死神の基本給の10%の税金によって護廷の財政システムは成り立っている。その中でも多くの割合を占めるのが、貴族会だ。彼らの多くは流魂街出身者ではない特権階級のあつまりだ。死神になる率も流魂街出身しゃより段違いに高い。そして、中央四十六室とはまた違う影響力を持っているのだが…」
そう、昔からそうだった。貴族たちは自分の出自のために自らの責を果たすべく、流魂街各地の荘園からの収入を寄付している。それは変わらない。護廷も慈善組織ではない以上、なにかと金銭が必要なのだ。隊士の生活、隊の予算、真央霊術院関係の予算。そのほかにも様々にお金がかかる。だからこそ、各隊は副業をしていたり、流魂街でも手に入れることが可能な瀞霊邸通信に連載を上位席官が持っていたりするのだが、予算は限られる。貴族会はそれにうまいことシステムを合致させたものだ。だが、考え方は一生涯を瀞霊邸の中で過ごすためか考え方に柔軟性がないというか保守的な考え方を持つものが多いのだ。
「その貴族会でも頭が上がらないのが朽木だってことだ。あいつの肩書きは4大貴族の当主ってのもある。その圧力で抑えているといっても過言じゃない」
そう吐き捨てるように冬師郎は言った。なまじ素性を知られるとあとあとが大変な冬師郎と違って朽木白哉はいざとなると自分の家の権力を惜しげもなく使うことに決めたらしい。本音を言えば王の血族という立場を使えば瀞霊邸にもっとも圧力がかけられるのは事実だし、王族法に則って、人道的ではないことに口出しはできる立場でもあるのが、瀞霊邸には自分の血筋を隠してはいるは、法に則ったものでもほぼ形骸化している条文を使うこと自体、権利の乱用につながる。それに、王族の役割は王族特務のまとめ役で十分と思っている以上護廷や瀞霊邸に口出しするのもはばかれた。

「まぁ、それは置いといて、何らかの対策は練ったんだろ、山じいも」
総隊長の考え方をある程度熟知している一心は続きを促した。護廷の最高責任者としてときには鬼かという命令を平気で出すことも知っている。だが、今回の件は明らかに権力を持っていると勘違いしている人間の要望だ。それに、今回は隊長たちが拒絶反応を起こしたというから、妥協案で我慢させる気だろう。幸い中央四十六室がまだ機能していない今だからできることだ。
さらにいずれにしてもそろそろ霊圧の制御を教えなければいけないころ合いだろうというのは分かっていた。
「ああ、今回死神としてもしお前の了承がとれるなら、全面的なバックアップは護廷が責任持って行うし、現世の学業の負担にならないように霊術院に籍は置いても実際はほとんど浦原のところで学べるようにする。何といっても元鬼道衆のテッサイさんがいるし、夜一さんもいるからな。期限は決めない。そして人生を終えて尸魂界に来てもすぐ死神としての活動は可能だ」
「もし、俺がいやだと言ったら」
「代行のままだ。代行だから、よほどのことが無い限り動かなくていい。どちらを選んでもお前の霊圧は限定封印をかけさせてもらうがな。」
「限定封印って」
限定封印のことも一護は知らない。父親の任務内容故に、父親の血筋ゆえに死神の因子は存在していた。藍染が動かなければ、人としての死を迎え、尸魂界に来てから普通のコースをたどって死神になっただろう。それか流魂街の時点で特務に入隊していただろう。それはもしもという仮定の範囲であり過去にはもしもというのはつかない。とりあえず、説明が先だ。
「俺達死神でも副隊長以上のものは霊圧が高すぎて現世の魂魄に影響が多大に出てしまう。それはお前にも言えることで、お前の霊圧の高さがほかのやつらに影響を及ぼしているだろ」
「井上とチャド、それにたつきたちも・・・」
一護は知っているだけでも友人の名を挙げる。井上と茶渡の場合は自分が直接関係している。また、たつきたちに影響を及ぼしたことも藍染の件の後で知った。自分が霊圧を垂れ流しにしているために影響が出たのだということも。
「ああ、それを防ぐために通常は20%しか使えないようになっている。それでも影響が多い時はさらに限定封印をかけていたりとかな。俺も影響が大きい方だから、通常の限定封印の他にもう1つかけている。それで、10%だ」
「じゃぁ、限定封印をかけた俺は…。現世だと」
「卍解がきついかもな。打てはするが、破面相手はきついかもしれないのレベルにはする」
破面相手はきついかもというのなら現世では支障はないのかもしれない。卍解を打てるのなら。どちらにしろ、自分の将来を決めなければいけない。あまりにも現世とはかけ離れた世界にかなり足を突っ込んでしまっている自覚はある。まぁ、そのために現世の学業から縁遠くなり必死に今詰め込んでいる最中だ。藍染のことがあり2学期は学校生活自体まともに送れていない。記憶置換で2学期の間は学校に行っていたことになっているし、成績も1学期と同じぐらいとれていることになっている。だが、遅れた分を取り戻すのに冬休みかかっていたぐらいだ。何度も虚で呼び出されると正直つらい。
「学校は」
「可能な限り優先してもらっていい。というか優先してほしい。お前の人としての生活を奪ってまで、尸魂界に貢献してもらうのには俺たちは反対だ」
返事は急がなくていい。そう言って冬師郎が去って、一心もいつの間にか部屋からいなくなっていた。


一護は考えた。

俺はどうしたい。現世には友人もいる。だが、あそこの雰囲気が自分にはなじみすぎていた。この数カ月のことがなければ普通に理系クラスに進級して医学部を目指すのだと思っていた。
だが、死神と出会い、彼らを知るにつれて自分の居場所を見つけたと思っていることに気付いた。後から気付く親父や尸魂界に敷かれたレールを自分の意思で結局は歩んできた。その思考は彼らの考えた通りだったのかもしれない。だが、どうすればいいのだろうか。
数日後、一護は決めた。浦原を通して尸魂界に連絡を取った。山本総隊長に映像伝心機を使い、
「俺、黒崎一護は正式に尸魂界の護廷に所属する死神となる」
と宣言した。










一応あとがき
いろいろ設定を考えてはいるのだが、それが生かせない。まあ、後日ってことで



2010、8・6